詩篇
詩篇の数々は、神の民の古くからの聖歌集をもって構成されていました。詩は、しばしば音楽の旋律に合わせて作られましたが、常にではありませんでした。詩篇は神に対する、または神に関する、個々の作者の感情を表わしています。様々な種類の詩篇が、詩篇の作者が置かれていた状況に対する様々な感情や思いを伝えるために記されました。
箴言
箴言は、聖書の他の書がしてはいないことを成し遂げています。箴言は地上で望ましい(結果を生む)人生を生きるための、数多くの短い教えを単に収集しているに過ぎません。他の書が深遠な神学的真理や、勝利や失敗の長々しい叙述、もしくは不従順な民への預言的な説教を含むのに対し、箴言は知恵の道を人々に教えることに完全に従事しています。箴言の著者たちは人間の人生の雑多で変化に富んだ状況を認め、また少数の特定の事例にのみ適用され、従うことのできる教示の数々よりはむしろ、多種多様な状況に適用できる原則の数々を提供しました。
伝道者の書
伝道者の書は自然論的な人生への視点、人生を人間特有の視点を通して見るが、世に対する神の統治と支配を究極的に認める視点を私たちに提供します。この書の、より「人間的」とも言える性質は、この書を、現代のより若い世代の読者、人生の痛みや不安定さを否応なしに突きつけられ負わせられてきたが、神にある希望に依然としてすがりついている男女の間で、この書が特に人気を博している所以でもあります。
雅歌
この書は少なくとも二つの理由により、旧約の中で稀有な存在感を示しています。単体の詩としてのその性質と、そしてその主題、わけても夫婦関係の間の、率直な(あからさまな)愛の論述においてです。雅歌の、夫婦のいとなみにおける愛情表現の話題をいとわずに切り出す姿勢は、歴史を通じて数多くの読者たちを落ち着かなくさせ、A.D.90年になってもヤムニア会議においてラビ・アキバ・ベン・ヨーセフが、ユダヤ教正典の中での雅歌の正統性(地位)を激しく弁護しなければならなかったほどでした。しかし、満ち満ちた形での夫婦関係の麗しさの証しとして、雅歌は夫婦のこの美しい現実を、その詳細で特異な描写で描き出すことによって特に異彩を放っています。
(*ヤムニアJamnia。古代パレスチナの沿岸都市ヤブニールJabneel のギリシャ名。現イスラエルのヤブネJabneh。A.D.70のエルサレム破壊後、ユダヤ教の中心地となり、ヤムニア会議 Council of Jamnia においてユダヤ教経典・旧約聖書正典が確定された。 *アキバ・ベン・ヨーセフAqiba ben Joseph。A.D.40?A.D135。ラビ、律法学者。トーラー〈律法〉とハラカーHalakhah 〈口伝法規〉を究極的に一つとみなした。禁令を犯しトーラーを説き続けたためローマ人に処刑される)
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